Perverse
「堂々と張り合えるようになったら、いつでも受けて立つわ」



時間と労力を費やす中で、彼女はきっと何かを得られるはずだ。



その時はきっと、私の事なんて目に入らなくなるくらい仕事にのめり込んでいるかもしれない。



私と張り合おうとしたことを懐かしく思うほどに。



「その時の三崎さんの吠え面、楽しみにしときますんで」



「返り討ちにするけど」



余裕の笑みを浮かべると、竹下さんも負けじと不敵な笑みで対抗する。



「どうぞどうぞ。私、三崎さんより随分若いんで、成長早いですから。そんなに長くかかりませんよ」



ぷいっと背を向けて竹下さんは扉へと向かって行った。



ドアノブに手をかけると、背を向けたまま立ち止まる。



「仕事のことはともかく、女としては劣ってませんから」



その一言だけ呟くと、竹下さんは勢いよく扉を開き出て行った。



「ごめんなさいもナシか…」



元より謝罪なんて求めてはいないけれど。



それにしても…。



「怖かったぁ……」



予想を超えた変化で思いもよらない形での解決を迎えたけれど、素に戻れば今さらながら手汗が浮かぶ。



最後の一言は弓道の矢のように私の心に突き刺さったけれど 。



それでも満足感が満ちているのは柴垣くんに貰った勇気のおかげかもしれない。



自分の大きな心の変化に、自分が一番驚いた15分だった…。
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