Perverse
過去と他人は変わらない。



けれど自分と未来は変えられる。



竹下さんには偉そうに言ったけれど、私もそんなこと忘れていた気がする。



いくら仕事ができたって、人間性を成長させなければ人として中途半端だったんだ。



描いたような笑顔を顔に貼り付けても、見る人が見ればお見通し。



きっと柴垣くんはこのことを言っていたんだな。



「私もまだまだだ…」



清々しい笑いがこみ上げてきて、心の中もスッキリしたようだ。



「素直に素直に…」



呪文のように呟くと、使った二脚の椅子をきっちり整頓して小会議室を出た。



こんな気分の時は美味しいコーヒーでも飲みたいんだけど…。



会社から支給されている携帯を取り出して時間を確認する。



「時間ないや」



せめて会社の目の前のコンビニで挽きたてのコーヒーでも買いたかったのに。



別に行っても構わないのだけれど、社内にいると社内時間に合わせて動いてしまう。



残念に思いながらエレベーターのボタンを押すとすぐに扉が開く。



「あ」



「あ」



エレベーターの壁にもたれていたのは柴垣くんだった。
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