Perverse
「お疲れ」
柴垣くんが笑顔でそう言ってくれたものだから、
「お疲れ様」
私もにこりと笑ってエレベーターに乗り込んだ。
途端に鼻をくすぐる香りは。
「コーヒー買ってきたの?」
「ああ。給湯室のコーヒー、苦手なんだよ」
「私も」
隣で笑うと、柴垣くんは手に持っていたコンビニの袋からコーヒーをひとつ取り出した。
「ほら」
「え?」
それを私の前に差し出して受け取るように促した。
「でもこれ、柴垣くんのでしょ?」
「俺のもちゃんと買ってきた」
確かに袋の中にはもうひとつのコーヒーが覗いている。
「これはお前の」
「ありがとう…」
申し訳なかったけれど、タイムリーなコーヒーの誘惑に負けて、そっとカップを両手で包んだ。
「あとこれも。お前がいつも食べてるヤツ、ホワイトチョコも出てたぞ?」
それは私が大好きな、キャラメリゼしたマカダミアナッツが入ったチョコレート。
それ自体も嬉しかったけど、何より柴垣くんの口から『いつも』と自然に出てきたことが嬉しかった。
「ありがとう。でもいいの?」
「ご褒美だ」
「ご褒美?」
何のことかと首をかしげて繰り返すと、柴垣くんはバツの悪そうな顔をして『なんでもねぇよ』と言うと、ちょうど開いたエレベーターのドアから急いで出て行った。
何だったんだろう?
けれどそれからは暇もないほど仕事に追われ、その真意を聞くことはできなかった。
柴垣くんが笑顔でそう言ってくれたものだから、
「お疲れ様」
私もにこりと笑ってエレベーターに乗り込んだ。
途端に鼻をくすぐる香りは。
「コーヒー買ってきたの?」
「ああ。給湯室のコーヒー、苦手なんだよ」
「私も」
隣で笑うと、柴垣くんは手に持っていたコンビニの袋からコーヒーをひとつ取り出した。
「ほら」
「え?」
それを私の前に差し出して受け取るように促した。
「でもこれ、柴垣くんのでしょ?」
「俺のもちゃんと買ってきた」
確かに袋の中にはもうひとつのコーヒーが覗いている。
「これはお前の」
「ありがとう…」
申し訳なかったけれど、タイムリーなコーヒーの誘惑に負けて、そっとカップを両手で包んだ。
「あとこれも。お前がいつも食べてるヤツ、ホワイトチョコも出てたぞ?」
それは私が大好きな、キャラメリゼしたマカダミアナッツが入ったチョコレート。
それ自体も嬉しかったけど、何より柴垣くんの口から『いつも』と自然に出てきたことが嬉しかった。
「ありがとう。でもいいの?」
「ご褒美だ」
「ご褒美?」
何のことかと首をかしげて繰り返すと、柴垣くんはバツの悪そうな顔をして『なんでもねぇよ』と言うと、ちょうど開いたエレベーターのドアから急いで出て行った。
何だったんだろう?
けれどそれからは暇もないほど仕事に追われ、その真意を聞くことはできなかった。