Perverse
このまま浸りたい気持ちになってしまったけれど、どうしても言っておきたいことがある。



それが原因で私達はこんなに遠回りしたといっても過言ではないのだから。



「あの日、ホテルで…」



ホテルなんて口にすると妙な怪しさが滲むような気がして、途端に恥ずかしくなった。



けれど今言わなければ、きっと一生言えないだろう恨み言。



「私の事一人残して、サッサと部屋に帰ったくせに」



一人残されて悟った柴垣くんの気持ち。



あれは本当に心が痛かった。



「ちっ!違うっ!それ全然違うからっ!誤解だ誤解っ」



私の方が驚くほど取り乱した柴垣くんは、頭や手をブンブン振って思いっきり否定する。



「あれはな?置いていったとか残していったとか、そんな気持ちの入った結果じゃねぇんだよ」



「全然意味がわからない」



恨めしそうな目付きで見上げると、柴垣くんは眉を下げておどおどと見つめ返してきた。



「お前はぐっすり眠ってたし、俺も着替えようと思って部屋出たんだよ。そしたらキー持って出るの忘れて。結果、締め出されたってわけ」



「…………それだけ?」



「それだけって言うな。それ説明しようと思ってたら、お前は何も聞かずにいきなり全部を無かったことにしたんだよ」



…………そんな…理由だったの?



そんな理由で私は…。



私って……バッカじゃないの?
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