Perverse

私こそ、信じらんねぇ、と呟きたい。



まさかそんな裏話があったなんて思いもよらなかったし。



お互い何も言わなかったから悪いんだけど。



それはわかってるけど。



ちゃんと聞く耳を持ってれば。



こんなに馬鹿な思い込みはしなかったかもしれない。



「そんなこともあったから、竹下さんのこと、ずっと勘違いしてたの。柴垣くんは否定しなかったって聞いてたし」



問いただした同僚が否定しなかったと言ったからこそ、噂は本当なのだと確信めいた話が広がったんだ。



それにまんまと踊らされた私。



マヌケな話だ。



「確かに否定はしてないけど、肯定もしてないよ。肯定する要素は何一つなかったからな」



今柴垣くんの口から聞けば素直に納得できるのに。



「あの頃の竹下は、三崎のこと異常に敵視してただろ。パターン来なかったり納期知らされてなかったりがあったし。それもこれも全部、おれに執着しているせいだった。だから否定も肯定もしないに限ると思ったんだよ」



「そうだったんだ…」



「津田さんならお前をもっと確実に守れたんだろうけど」



「私は津田さんに甘えて守ってもらおうなんて思ってなかったよ」



「わかってる。だから竹下の自由にさせて波風立てないように口を噤んでた」



全部私の為だった…。



「そのうちお前がちゃんと自分でケリつけると信じてたしな」



「柴垣くんが勇気をくれたからだよ」



「頑張ってくれてよかった。竹下との話、詳しい事は省いてもいいか?」



「もちろんだよ」



柴垣くんと竹下さんの事なんて、私が知る必要は無い。



変わってくれた今があれば十分だ。

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