Perverse
知りたいか知りたくないか。



その二択であれば知りたい。



けれどなかには、知らなくていいい事というのは必ず存在するものだ。



私がそうであったように、お互いの事だけを想っていたということは、ちゃんとわかる。



その柴垣くんが私を不安にさせるような事をしているはずが無い。



「もう少ししたらちゃんと話すな?」



「うん。大丈夫」



たぶん柴垣くんは、今まさに変わろうとしている竹下さんの過去の悪事を、今はまだ私の耳に入れたくないんだろうと思う。



きっと全てを懐かしむほどの過去になった時、彼はちゃんと私に話してくれるだろうから。



今の私はそれを不安なく待てる。



「ねぇ、柴垣くん。一体いつから私のこと見ててくれたの?」



柴垣くんが私を想ってくれてたなんて考えもしなかった。



そんなきっかけさえも身に覚えがなくて、恥ずかしいけれど恐る恐る聞いてみた。



「そんなの…最初からだよ。初めて会った時から」



「えええっ!?」



柴垣くんの答えは意外すぎて。



驚きのあまり声後裏返ってしまった。



「なんだよ、その嫌そうな驚きは。一目惚れなめんなよ。コロッと簡単に落ちて、もうすぐ6年だ」



「……ウソみたい」



だって柴垣くんは入社した時から冷たくて。



私にこれっぽっちも優しくなかった。



おまけに『お前は男をダメにする女だ』と断言されてしまうし。



私は本当に柴垣くんの事が怖くて苦手だったんだから。
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