Perverse
まだハッキリと覚えている感触と温もりに、再び私の唇は被われた。
「……んっ」
だめ…。
そう思うけれど、もう抵抗する気なんて微塵も起きなくて。
私は見開いていた目をゆっくりと閉じた。
それが合図だったかのように拘束されていた手は解かれ、グッと腰を引き寄せられ、頬に添えられた手によって上を向かされると自然に唇が開いた。
隙間に滑り込んできたのは、あの時私の唇だけをノックして離れていったもの。
その生々しい感触に背筋がザワつく。
恐る恐る差し出せば、それはあっという間に絡まって、私の心ごと捕らえてしまう。
「…ふっ…ぁ…」
艶めかしい吐息とお互いの舌の絡まる音が、昼下がりの会社の給湯室に響く。
はしたないと思いながらも、柴垣くんのスーツをギュッと握り締めて、湧き上がる羞恥心と快感に身を任せた。
ずっとこのままで……。
その願いは叶わず、遠くの方から聞こえたきた話し声が私達を現実へと引き戻し、その濡れた唇はゆっくりと離れた。
「やっぱりお前は流されすぎだ」
柴垣くんは一言そう言って私を解放すると給湯室を出て行った。
そのスーツの背中にシワを見つけ、私が握り締めた後だと気付いた時、私の頭は再熱した。
今日はもう…何も考えられない…。