Perverse
episode 3
「ずっと前から好きだったんだ」
店内のざわついた周囲の中、津田さんは意を決したかのように真っ直ぐ見つめてそう言った。
駅前のビストロチェーン店を選んだのは、騒がしくもなく静かでもない、丁度いい雰囲気だったからだ。
居酒屋も考えたけれど、できればお酒を呑んで雰囲気が変わってしまうのは避けたかった。
津田さんから好きだと言われる前から答えは出ていたし、長々と二人きりでいるよりも、駅近くを選ぶことで電車も気にする環境に身を置いておきたかったのだ。
それにこの店にいればひょっとして帰宅途中の柴垣くんの後ろ姿を見ることが出来るかも知れないと思ったから。
「初めはいい後輩だって思ってたんだ。でも三崎さんの仕事ぶりや努力、周りへの気遣いをずっと見ているうちに、どんどん惹かれていった。その気持ちは今でも日に日に大きくなるんだ」
逸らされることなく思いを告げられると確かに胸が熱くなる。
けれどそれは人としての感動で、女としての喜びじゃない。
それを鮮明に知らしめるのは柴垣くんとの、あのキスのせいなのか。
私の心は微塵もときめいたりしなかった。
「……ありがとうございます。そんなふうに想ってもらえて光栄です。…でも…」
「今は何も言わないで欲しい」
『私には好きな人がいる』
津田さんは私のその言葉を遮り、先を続けることを許してくれなかった。