Perverse
「えぇ??どうしてですか?結菜さんは柴垣さんしか見てないのに」



「だから、私は、って言ったでしょ?そこまで思ってくれる人なんて、そうそう出会えるわけじゃなもの」



「まぁ確かに幸せな事ではありますよね」



「それは自分でも理解してる…」



だからこそこんなに頭を悩ませているわけで。



でもだからといって柴垣くんと津田さんの間で揺れ動いているわけではない。



自分の気持ちはハッキリとしている。



津田さんはああ言ったけれど、今後も私が津田さんを男性として意識することはないんだ。



それくらい私の中で柴垣くんは大きすぎる存在になっている。



ましてやあんな事があってからでは、私の中から出ていくわけない。



「あんなに苦手で避けてた人なのに、少し心に入り込んだと思ったら、みるみるうちに侵食して想いが絶賛増殖中なの」



「津田さんの入る隙間はないってことですよね」



「みたいね」



楓はそう言うとクスッと笑った。



「津田さんの想いを受け止めれば幸せになるのかもしれないけど、私は柴垣くんを選ぶ結菜が好きだわ」



楓がそう言ってくれたところで食欲を唆る香りが近付いてきて、テーブルにとても美味しそうな料理が運ばれて来た。



これは……食べ過ぎ決定だろうな…。
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