Perverse
それからというもの。



元カレの事など微塵も思い出す余裕も暇もなく。



あっという間にその日はやって来た。



朝から心臓は早鐘のように打ち続く。



皆に返す挨拶は、うまく笑顔を載せられているかもわからなかった。



特別な何かがあるわけでもない。



ただ私が一方的に彼のことが苦手なだけ。



私の全てを粉砕した人だから。



けれどまだ、異動者が彼だと決まったわけではない。



あの後も何も報告を受けることもなく今日を迎えたのだから。



ひょっとしたら異動の話自体、本当に噂話だったのかもしれないし。



僅かな期待を胸に、フロアへと入ってきたばかりの部長へと視線を投げた。



部長はカバンから必要なものを取り出し机の中に仕舞うと、



「ちょっと集まってくれ」



と、声を張り上げた。
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