私の遠回り~会えなかった時間~
久保さんの言葉に冷静さを取り戻した私は久保さんに微笑んだ。

なるべくそれ以上表情を崩さない様に、温かい久保さんの手を感じる。

こんなに丁寧にメイクをしてもらう事がなかった私は段々楽しくなって来た。

ついつい笑みがこぼれてしまう。

少し余裕が出来たようだ。

「さっ、出来上がりよ。」

久保さんは私の手を取って、私を立ち上がらせた。

それと同時に歓声が上がる。

私は自然と笑顔になった。

ここに居る人たちの視線がすべて私に集まっている。

その後は何だかフワフワして、久保さんの指示に従う事で精一杯だった。

正直、あまりこの時の記憶がない。

でもとても楽しかった。

退場した後、久保さんが控室でホッとした様な表情を見せた。

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