私の遠回り~会えなかった時間~
加代さんは食べながら彬さんを睨む。

「そうそう、知紗はあの時お姉さんと会ったって言ったのよ。」

お母さんがその話を蒸し返す。

彬さんは私を不機嫌そうな表情で見る。

「叔母さんは覚えているだろう。あの時俺は叔母さんに遊ばれていたんだ。だからその事にも触れたくなくて、なかなか知紗にも話が出来なかった。」

こらえられない様にクスクス笑う加代さん。

「あまりにもあの当時の彬はきれいな顔立ちをしていてね。女の子が欲しかった私が彬に化粧をしたのよ。途中で気が付いた小学生の彬は凄く怒ってそのまま飛び出したの。」

じゃあそのままの顔の彬さんと私は出会ったわけで…。

「いつかお姫様にしてやるから、それまで髪を切るなよ。」

彬さんの言った言葉に、私の頭の中に電気が走った。

思い出した。

そう言いながら彬さんは利き手の左手で鋏のポーズをしたんだ。

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