私の遠回り~会えなかった時間~
意地悪そうな表情をした加代さんが彬さんをからかう。

彬さんは困ったように私を見た。

彬さんが何を言いたいのか分からない。

彬さんは決心したように、加代さんに向き直った。

「さっき、恋敵と初めて顔を合わせまして…。まあ…、今晩は知紗と離れたくないと言いますか…。」

微妙な敬語がたどたどしい。

「はい、了解。からかって悪かったわね、彬。じゃあここで解散しましょう。」

そう言うと、加代さんとお母さんはまたがつがつ食べ始めた。

やっと穏やかな食事の時間を迎えたようだ。

私達は来た時と同じ組み合わせで、店の前で別れた。

「彬、明日も仕事だからね。寝坊したらたたき起こすからね。」

威勢のいい加代さんの声は、お母さんの笑い声と共に駐車場に響いていた。








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