私の遠回り~会えなかった時間~
10
「あの二人にはやられっぱなしだな。」

車に乗り込むと、彬さんは溜息をついた。

「自分で立てた作戦に自分でハマってしまっている気分だ。」

私は思わず彬さんの方を振り返った。

「どういう事ですか?」

私の言葉に彬さんは口を押えた。

そしてそのまま私の方を見て、私の様子を伺っているようだ。

「彬さん?」

私のきょとんとしたような表情に、彬さんは笑みをもらした。

「知紗を手に入れるために、叔母さんに俺の気持ちを話して、周りから固めていこうとした。その事で俺が叔母さん達に振り回されているような気がする。」

そう言うと彬さんは声を出して笑い出した。

「俺は大変な味方を作ってしまったようだ。」

彬さんのその一言に、私も声を出して笑ってしまった。

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