私の遠回り~会えなかった時間~
「そんな事をしなくても大丈夫だったのに。」

笑いながらそんな風に伝えた私を、彬さんはじっと見た。

「じゃあ、知紗は叔母さんが誘わなくてもあの日に美容院に来たか?二人に俺達の出会いの事を聞かなくても、ちゃんと思い出す事が出来たか?それに…。」

何とも肩身の狭くなる事ばかり彬さんに言われて、私は閉口する。

「ははは、そうですね。」

私は照れ隠しに苦笑いをした。

ずっと他の美容院を探していた事は黙っておこう。

でも私はすっと顔を上げた。

「今は全てのおぜん立てに感謝です。彬さんのそばに居られるだけで幸せです。」

素直に出た私の言葉。

「知紗…、今日は知紗を俺のモノにしていい?」

えっ?

彬さんは私の答えを聞く前に、車のエンジンを掛けた。

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