私の遠回り~会えなかった時間~
私は答えるタイミングも、どう答えていいかも分からなくて黙っていた。

何とも言えない緊張感の車内。

こういう時は何故か信号にも捕まらなくて、車は順調に進んでいく。

「知紗…。」

やっと彬さんの声が聞けた。

「このまま家に送って行っても良いんだぞ。どうする?」

いつもより低く感じる彬さんの声。

ちょっと震えているように感じるのは気のせいだろうか。

「俺は焦らない。知紗の気持ちが大切だからな。」

ああ…。

何とも言えない緊張感と共に私の身体の中を何かが貫いた。

私、きっとこの人とずっと一緒に居る事になるんだろうな。

この人なら…、彬さんなら信じられる。

「彬って…、これからはそう呼んでも良いですか?」

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