私の遠回り~会えなかった時間~
ドアが開けられたその奥は、何とも殺風景な空間だった。
大きなベッドに寝ながら見られそうな位置に小さなテレビ。
小さな座卓机の周りに、ファッション雑誌が散乱している。
この部屋は10畳ほどあるだろうか。
「ここは寝るだけの部屋だからな。」
彬はそう言うと私をベッドに横たえた。
「怖くなったらちゃんと言え。」
彬は私にまたがり、顔を思いきり寄せてきた。
「初めてだろう?」
そんな彬の顔を見ているだけで、涙が浮かんできてしまう私。
怖いんじゃないんだけど…、でも…。
「知紗?」
「私は…、どうしたらいい?」
もうさっきからの熱で喉がカラカラで、声がかすれてしまう。