私の遠回り~会えなかった時間~
「彬…、彬さんは私の母の友達の甥になるそうです。つい先頃、うちの近くのその叔母さんの美容院を継いだんです。」
木本さんも初めて聞く話に興味深そうだ。
「まあ、こんな近くに居たのね。連絡くらいくれたらいいのに。じゃあ、彬先輩に伝えてくれる?それから改めて会社からアポイントを取るわ。」
久保さんがウキウキしているのが伝わってくる。
「彬先輩は凄いのよ。海外での評価は大変なものだったのよ。いつの間にかメイクの技術も追い抜かれてしまったわ。」
久保さんは私の知らない彬を知っている。
そう思うと、私は何となくもやもやする。
「美容院の電話番号を教えますので、直接連絡を取られたらどうですか?」
ついそんな嫌な事を言ってしまった。
でも久保さんはそんな事に気が付かないようで、ニコニコしている。
「分かったわ。大沢さんも自分からは言いにくいわよね。私から連絡してみるわ。」
そこで私達は食事をとり始めた。