私の遠回り~会えなかった時間~

彬は私を見下ろす。

「会社の人だから、そんなに詳しい事は話していないよ。その場に木本さんが居たけど、黙っていてくれた。」

そう私が話すと、彬はニッコリ笑って私にキスを落とした。

「別に隠す必要はないが、あいつにはわざわざ言う事はないしな。もしそれが知れたら、恐ろしいほどの質問攻めに遭うぞ。」

その台詞に笑った私に、彬が今度は額にキスをした。

「まさか知紗がポスターのモデルをする事になって、そのスタイリストに俺が選ばれるとは思っていなかった。」

「彬、あのね…。」

私は久保さんの思いを語った。

「彬をスタイリストとして日本でも売り出したいって言っていた。でも私は…。」

彬がもし気が進まないのなら、正直に断ってほしい。

「知紗をお姫様に出来るのは俺だけだ。」

彬の瞳に私が映る。
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