私の遠回り~会えなかった時間~
彬が相談を兼ねて、加代さんに話をした。

こんな様子を見ると、彬も私と同じように加代さんを慕っている事が分かって嬉しい。

「公私混同しないなら、賛成だけど…。」

加代さんは少し表情を曇らせる。

「二人とも仕事は仕事でちゃんとけじめをつけないと、周りに気を使わせてばかりになってしまうわ。」

そして加代さんは私を見た。

「でも初めての事で知紗ちゃんは期待と共に不安もあると思うから、そばに彬が居れば安心よね。」

加代さんのその柔らかい笑顔に、私は心が温かくなる。

「向こうとのスケジュールで臨時休業をするのなら、私がその日は店に出るわ。でもね…、彬…。」

今度は彬の方を向いた加代さんは少し厳しい顔をする。

「その後輩さんが言う通り、今度の仕事が認められて、スタイリストとしての仕事の依頼が舞い込むようになったら、ここはどうするつもり?」

彬はハッとしたようだ。

< 162 / 244 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop