私の遠回り~会えなかった時間~
「せっかくあなたは自分でお店を持ったのよ。その事には責任を持って欲しいのよ。」

「俺は知紗の為にこの仕事を引き受けようと思っただけだ。その後は当然この美容院に専念するよ。」

「そう。」

加代さんはまだ難しい表情は崩さなかった。

何を考えているんだろう。

私はいつもと少し違う加代さんが気になった。

「まあ、それはその時々に考えましょう。知紗ちゃん、頑張ってね。彬、そろそろ知紗ちゃんを家に帰さないとね。」

自分の車に乗って、彬と加代さんに手を振った。

「また、いらっしゃいね。」

加代さんの声が美容院の中に消えて行く。

「知紗、一緒に頑張ってみないか。俺はこの仕事のために今まで修行をしていたような気がする。」

そこに残って話す彬の声は低い。

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