私の遠回り~会えなかった時間~
山本さんも興味津々で私達を見つめて、何かを言おうとした時だ。

「まあ、それは後回し。今は仕上げの仕事をさせてくれ。」

彬は久保さんをうんざりした様な顔で見ると、私の方を振り返った。

私が頷くと、久保さんは山本さんと木本さんを促して出て行こうとした。

「これ以上ない仕上げを期待していますよ、彬先輩。」

久保さんの声がドアの音で遮られた。

彬と2人きりになった。

「さあ、始めようか。きれいにしてやるぞ。」

少々怖さを感じる彬の笑顔だった。

ポスター撮影が終わった。

私は今鏡を前に座り込んでいた。

「私じゃないみたい。」

鏡の中の私は、少し疲れた表情をしていた。

ううん、違う。

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