私の遠回り~会えなかった時間~
「まだ二人にも話していないんだけれどね…。」

山本さんは低い声で、私に近づいてきた。

「あなた…、我が社の専属モデルをしない?」

私は山本さんの言葉が上手く理解できない。

「私はこの会社の一社員ですよ?しかも総務。」

山本さんは私を優しい微笑みで包む。

「これはあなたをポスターに起用する話が出た時点で、企画室室長と会社の上層部で話し合われてきたプロジェクトなの。もちろんすぐにあなたにモデルが出来るとは思っていないわ。だから海外でそういう勉強をしてきてもらうの。それは少なくとも1年はかかるだろうと計画しているわ。」

「えっ?」

ただ私は山本さんを見つめているだけ。

「山本さん。」

そこに入って来たのは彬だった。

「今日はありがとうございました。やっぱりすごい方なんですね。」

< 172 / 244 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop