私の遠回り~会えなかった時間~
山本さんは彬の方を向いて、頭を下げた。

「あんなに良いポスターを撮影出来たのは、山瀬さんのおかげです。これでこの新ラインの成功も間違いなしです。」

山本さんの口からはどんどん言葉が出て来そうだった。

「…ちょっと待って。」

彬は山本さんを手で制すると、一度私を睨んでから、山本さんの前に進み出た。

「今の話は本当ですか?」

「えっ?」

「知紗のモデルの話の事です。」

彬は腕組みをしながら、山本さんに聞いた。

「我が社に所属したままだから資金の心配はないし、何より本人にとっていい話だと思いませんか?一人の人間としてのステップアップとしては最高のおぜん立てだわ。会社にとっても、一社員からモデルを育て上げるという一連のプロジェックトは大きな利益を産むと上の人達は考えているの。」

そして大沢さんは私を見た。

「あの落ち着きと度胸はこのプロジェクトにうってつけの人だと思うし。」

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