私の遠回り~会えなかった時間~
違う。あれは彬が居てくれたから…。

私は喉まで出かけた言葉を飲み込んだ。

また彬に睨まれたからだ。

「山瀬さんにも出来れば、これからもうちの仕事を手掛けて欲しいと思っています。山瀬さんさえ良ければ、彼女の専属でお願いしたいくらいです。もちろんこれも上の人達の考えですけど。」

山本さんはすべてを吐き出すかのように、興奮していた。

「…一度知紗と相談する時間が欲しいのですが。」

ポツリと彬は言った。

その様子は山本さんと真逆だ。

私は自分の事ながら、何が起こっているか掴めないままだ。

「…とにかく帰る支度をしろ。」

彬は段々口数が減って来た。

そして彬は廊下へ出て行った。

慌てて着替えている私に向かって、山本さんは一生懸命話しかける。

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