私の遠回り~会えなかった時間~
彬の動揺も手に取るほど伝わってくる。

「…彬、私達別れよう。」

私は泣き顔の不細工な表情のまま、彬を見て言った。

「何言っているんだ。俺があの美容院で知紗を待っていれば良い事じゃないか。」

声を荒げる彬。

こんな余裕のない彬の表情は初めてかもしれない。

「やっと、やっと知紗を手に入れたんだぞ。何でそれをこんな形で手放さなきゃいけないんだ。」

私は彬に肩を掴まれ、大きく揺すぶられる。

「私は会社に縛られるんだよ。この先は分からない。だから私は彬を縛りたくないの。」

「だからって…。」

彬はハッとして私を見た。

私がゆっくりと首を振ったからだ。

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