私の遠回り~会えなかった時間~
「もう、知紗の気持ちを変える事は出来ないってことだな。」

私は今度はゆっくりと首を縦に振った。

「きっと考えれば考えるほど、迷ってしまう。これが一番いい選択だったと後で言えるような気がするの。」

彬も悟ったようだった。

「悪いが、一人で帰ってくれ。ここでさよならだ。」

彬の感情がこもっていない言葉が、私の胸に突き刺さった。

「ありがとう、彬。短かったけど、こんな幸せな時間をありがとう。」

私の口からは感謝の言葉しか出ない。

「…知紗。」

彬の手が私から離れた。

「知紗の思うようにしてやるのが、大人の対応だよな。」

彬はそう言うと、私に背中を向けた。

どうしてこの時、私は彬が言ったように<相談>をしなかったんだろう。

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