私の遠回り~会えなかった時間~
「まるで他人事みたいね。」

複雑な顔でお母さんは私を見る。

「結局家事は教えてあげられなかったわね。」

いつもと違うお母さんの様子に、私は目がウルウルしてくる。

「最後に彬さんに会って行かなくていいの?何か伝えてあげようか?」

いつもはあっけらかんとしているお母さんの優しい声に私の声がうわずる。

「私が決めた事だから。彬…、彬さんには申し訳なくて…。」

今まで胸に抑え込んでいたものが、堰を切ったようにこみ上げてきた。

「お母さん、私は何か間違えたのかな?どうしてこんな気持ちを味わわなきゃいけないのかな。」

まるで幼い子が縋り付くように、私はお母さんに抱き着いた。

涙が止まらない。

「素直に彬さんに<待ってて>って言えれば良かったのにね。」

お母さんは頭を撫でながら、私に囁いた。

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