私の遠回り~会えなかった時間~
「そうか、気のせいじゃなかったんだ。俺も山瀬さんが居たように感じたんですが…。」

久保さんと木本さんは心配そうに私を見た。

私は笑いながら、首を振った。

「きっと見間違いです。山瀬さんがここに来るはずはありませんから。」

これからほとんどの時間を共にする事になる二人にはそれとなく事情を話してあった。

「そうですね。」

何か吹っ切るように木本さんが答えた。

「もう忘れて下さい。」

「大丈夫よ。彼の事を考える時間なんてこれからは持てなくなるんだから。
木本君、二人で大沢さんをしっかり支えていきましょう。」

私にはなんと頼もしい味方が付いたんだろう。

「私はダメ人間なのですぐくよくよします。励まして下さいね。」

私は空元気で、でもそれに気づかれないように振る舞う。

この準備の数か月も大変だったが、それからも大変だった。

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