私の遠回り~会えなかった時間~
「だから、大沢さんにはあえて話してなかったんですけど。」

少しバツが悪そうに木本さんは私を見た。

「俺個人としては、しばらく日本に帰りたくないから、ちょうどいいんですけどね。」

「そんなに木本君は、大沢さんを独り占めしたいの?」

意地悪そうに、久保さんが笑う。

「分かっちゃいました?」

大きな声で木本さんも笑う。

いつも3人揃うとこうだ。

二人の掛け合いに、私がそばで笑う。

彬と居る時にあんなにおしゃべりだった私は居ない。

「やだっ。」

また彬の事を考えて声を出してしまった。

気が抜けた時に、こうやって彬との思い出がふっと私の中に湧いてくる。

こうして思い出になっていっていくのかもしれないと思うと、ちょっと怖い気持ちある。

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