私の遠回り~会えなかった時間~
長旅の疲れというよりも、私は安心できる場所に居るという雰囲気がそうさせたのだと思う。

「あれっ?」

お母さんに起こされて、目を覚ました私は周囲を見渡した。

「ここは病院じゃないよ。」

寝ぼけた私は思わず叫ぶ。

「そう、ここは加代さんのアパートよ。ごめんね、お母さん、知紗に嘘ついたの。」

「そうでもしないとお前は帰って来ないだろうと、俺が許した。」

お父さんが付いて来たのはこういう事か。

私が逃げ出そうとしたら、無理やり加代さんの所へ連れていくそんな役割。

「知紗ちゃん。」

私は声のする方を振り返った。

ちょっと痩せたかな。

そこには懐かしい懐かしい加代さんの姿。

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