私の遠回り~会えなかった時間~
「だまして悪かったわね。早く家に入って。」

ちょっと疲れた表情を隠しているようにも見える加代さん。

久しぶりに加代さんの手料理が私の前に並ぶ。

もちろん思い出の春巻きも。

「時間がないのなら、単刀直入に話すわ。」

加代さんはみんなに食べるように促すと、自分は箸を取らないまま私を見た。

「彬の事なんだけど…。」

やっぱりそっちの話なんだな。

私は心の奥底にちくりと痛みを感じる。

「知紗ちゃんが行ってしまってから、様子は何も変わらないの。」

加代さんは溜息をつく。

「でもポスター撮影の現場に立ち会えないらしいの。そういうスタジオに入ると吐き気をもようしてしまうようで…。最近はモニターでその様子を見る事も出来ないようなの。」

私はいつもの私の仕事の様子を思い出していた。

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