私の遠回り~会えなかった時間~
私は何とか言葉を絞り出した。

「お願い、彬と会って彬の呪縛を解いてあげて欲しいのよ。それが出来るのは知紗ちゃんだけだと思うの。」

あまりにも漠然とした加代さんの言葉に私は当惑するしかない。

「今更、彬…、彬さんは私に会いたいと思うはずはありません。」

加代さんは困ったような顔をしながら私をまっすぐに改めて見た。

「…知紗ちゃんはどうなの?」

「えっ?」

「ちゃんと知紗ちゃんの中でけじめは付いているの?あんなに急で…、充分な話し合いも出来なかったでしょうし、それに…。」

私は思わず下を向いた。

「自分達が納得して別れるという結論を出したわけじゃないでしょう。」

ダメだ…。

私の目に涙があふれる。

「加代さん、知紗を責めないであげて。」

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