私の遠回り~会えなかった時間~
この歳になっても、やっぱり加代さんの押しの強さに私は負けてしまう。

「…分かったよ、加代さん。」

私はそうつぶやくしかなかった。

私から唐突に告げた別れを私は十字架のように背負っている。

私から連絡を取る事は、絶対考えられない。

加代さんの家をお暇すると、私は抜け殻のようにタクシーで会社へ向かう。

とても大きな宿題を課された私はただただ窓から外の景色を追った。

この道は…。

このまま行けば、彬の美容院の前を通る。

私は胸を抑え、動揺を隠そうとした。

「あっ。」

店の前であるお客さんを見送る彬の姿が見えた。

最後のあの時と変わらないように見える。

「彬…。」

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