私の遠回り~会えなかった時間~
思わず身を乗り出して、覗き込んだ私は次の瞬間息を飲んだ。

美容院のドアから、山本さんが出てきたのだ。

山本さんは彬に何か話しかけると、二人は笑顔になった。

まるで恋人、いやその年齢から夫婦に見えないこともなかった。

企画室の木本さんの上司で、久保さんと同期のあの山本さん。

加代さんに聞いた話と違って彬は随分元気そうに見える。

抑えられない動揺をかかえたまま、タクシーは会社に着いた。

玄関先には大勢の出迎えがあって、こんな所にも私がこの化粧品会社のプロジェクトの一員であることを自覚させられた。

マスコミ関係も来ているようだ。

私はタクシーを降りて、にこやかに社長と握手する。

その瞬間にたくさんのフラッシュを浴びた。

どうやら私は私自身が思っているよりも、ここでは有名人になっていたようだ。

いろんな人に守られて、私は会社に入る。

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