私の遠回り~会えなかった時間~
そして木本さんはいつものように大きな声で笑った後、一瞬真顔になった。

「大沢さんもいつまでも思い出に浸っていないで、現実を見て欲しいな。」

私にそう痛烈な一言を放つと、書類をしまって、席を立った。

私は慌てて、そんな木本さんに付いて行く。

急に木本さんが立ち止まった。

私は勢いよくその背中にぶつかった。

くるりと振り返った木本さんに私は強く抱きしめられた。

「木本さん?」

「本当によく帰って来てくれたね。もしかしたら、もう俺の元には帰って来ないかもしれないと思った。」

木本さんの手に力が入る。

「そんなにいい奴だったのかな、あの山瀬彬って奴は。」

私の身体がビクンと反応する。

「俺は彼のように君から絶対に離れない。俺なら…、君をこんなに悲しませないのに。」

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