私の遠回り~会えなかった時間~
「…叔母さんが一度きちんと知紗と話をしろと言って息を引き取った。でも俺には話す事はない。」

私の少しの望みもすべて絶たれた瞬間だった。

「ううん、分かっているから言わなくていいよ。」

私はやっと彬と視線を合わせた。

「私と顔を合わせる事で、不愉快な思いをさせたのならごめんなさいね。」

私は無理に笑顔を作った。

「今日はありがとう。これから自宅に寄ってから帰ります。」

もう今の私の限界だった。

これが<胸が張り裂けそう>という感情なんだろう。

ごめんね、加代さん、約束は守れそうにないよ。

「二人きりで話をした方が良いんじゃないですか?」

木本さんが後ろから心配そうに声を掛けた。

「いや…、必要ない。」

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