私の遠回り~会えなかった時間~
そして二人はその場から出て行った。
山本さんのすすり泣く声が遠のいていく。
「知紗、お前は何か勘違いをしていないか?」
「えっ?」
「俺は知紗に振られたぐらいでへこたれるような男じゃないぞ。」
私達は向かい合って座った。
「知紗の存在が大きくて、自分が思った以上にダメージを受けたのは俺の誤算だった。しかしそれ以上に大変だったのは、会いたくて会いたくてしょうがない気持ちを押さえる事だったんだ。」
私は彬の次の言葉を待つ。
「あんな別れ方をしたが、俺には知紗を手放す気は全くなった。ただ仕事をやり遂げようとする知紗の気持ちを尊重したかったんだ。覚えているか?俺はお前と同じように海外でスタイリストの修行をした経験があるんだぞ。」
私は昔に聞いた彬の事に思いを巡らす。
「他の事をすべて切り捨てるぐらいの覚悟じゃないと、一つの事に集中するのは大変な事なんだ。それが自分で決めた事じゃないなら猶更だ。その事を身を持って体験していたから、知紗の邪魔だけはしないとあの瞬間誓ったんだ。だからああいう形で送り出せたのは良かったと思っていたんだ。」
山本さんのすすり泣く声が遠のいていく。
「知紗、お前は何か勘違いをしていないか?」
「えっ?」
「俺は知紗に振られたぐらいでへこたれるような男じゃないぞ。」
私達は向かい合って座った。
「知紗の存在が大きくて、自分が思った以上にダメージを受けたのは俺の誤算だった。しかしそれ以上に大変だったのは、会いたくて会いたくてしょうがない気持ちを押さえる事だったんだ。」
私は彬の次の言葉を待つ。
「あんな別れ方をしたが、俺には知紗を手放す気は全くなった。ただ仕事をやり遂げようとする知紗の気持ちを尊重したかったんだ。覚えているか?俺はお前と同じように海外でスタイリストの修行をした経験があるんだぞ。」
私は昔に聞いた彬の事に思いを巡らす。
「他の事をすべて切り捨てるぐらいの覚悟じゃないと、一つの事に集中するのは大変な事なんだ。それが自分で決めた事じゃないなら猶更だ。その事を身を持って体験していたから、知紗の邪魔だけはしないとあの瞬間誓ったんだ。だからああいう形で送り出せたのは良かったと思っていたんだ。」