私の遠回り~会えなかった時間~
「おはようございます、木本さん。何だか深い眠りでした。」

あんなにはっきり夢を見ていたはずなのに、私は寝ぼけたままで答える。

「そうだな、俺が知紗にキスしても起きなかったもんな。」

「えっ?」

木本さんのその一言で、ばっちり目が覚めてしまった。

「嘘だよ。寝ぼけているから、反応も面白いな。」

「もう、勘弁してくださいよ、木本さん。」

頬を膨らませた私を、木本さんが見つめる。

「俺の大好きな知紗の笑顔が戻ったな。やっぱり山瀬彬は凄いんだな。」

私は自然と笑顔になった。

「そうそう、その顔。でもしばらくは俺が独占だ。その間に知紗が心変わりするかもしれないからな。」

またまた本気か冗談か判断が付かない木本さんの表情。

「それはないと思いますけどね。」

< 231 / 244 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop