私の遠回り~会えなかった時間~
好きな人がそばに居るだけで、こんなに幸せな気分になれるなんて忘れていた。

5年前に再会した時より、ずっとずっと嬉しい。

「知紗はずっと俺の後を追いかけているみたいだな。」

そう、仕事の修行に海外へ出て、そしてあっさりその仕事を整理しようとしている私。

あの美容院に帰って来た時の彬と同じだ。

「同じ経験をしたんだ。そんな俺達が一番理解し合えるに決まっているよな。」

彬の右の頬が、私の左の頬に触れる。

「用意は進んでます?」

ドアの外から久保さんの大きな声が聞こえた。

「再会にどっぷり浸ってもらう暇はないはずなんですけど~。」

久保さんの声は明らかに私達をからかっている。

「久保が悪いんだぞ。こんな再会をさせるから。」

彬が負けずに声を上げる。

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