私の遠回り~会えなかった時間~
木本さんは企画室に管理職として戻る。

これからは3人が別々の道を歩むことになる。

私達が思い出話に花を咲かせていると、片づけを終えた彬が入って来た。

「さすが彬先輩ですね。大沢さんのまた違う良い面が見えた気がしました。
まだまだ先輩には及ばないんだな、残念。」

久保さんが笑う。

「久保もなかなかのものだよ。もう一人前のスタイリストとして十分やっていけるよ。」

彬の優しい言葉に久保さんの表情が崩れた。

「彬先輩に褒められるなんて…、本当に頑張って良かった。そんなチャンスをくれた大沢さんに感謝だわ。」

彬は久保さんの頭を撫でた。

不謹慎だけど、ちょっと羨ましかった。

「俺も人間として一回りも二回りも大きくしてもらったような気がする。みんなありがとうございました。」

そんな風に木本さんは頭を下げた。

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