私の遠回り~会えなかった時間~
「前髪を整えるから、目をつぶってくれ。」

私は彬さんの言う通りにするしかなかった。

目を閉じると、近かった彬さんの顔がさらにちらついて、顔が赤くなる。

「よし。目を開けて見てみろ。」

彬さんはまた私の後ろに戻っているよね。

そんな気配を確認してから、私はそっと目を開ける。

「えっ?」

鏡の中にいる私の姿に私は声をあげた。

前髪を横にながしたショートカット姿の私。

耳の下からは軽やかに横跳ねをしている毛先が見える。

「知紗に似合っていると思う。これで年齢相応に見えるだろう。」

私は鏡の中のそんな私の姿を信じられない思いで見つめる。

これまでの私とあまりも違う印象に、自分でも驚くしかない。

「あの…、彬さん。」

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