私の遠回り~会えなかった時間~
4
「知紗、知紗。」

お母さんのその声に私は我に返った。

「あなた、美容院から帰って来てからおかしいわよ。そんなに髪を短くして来たかと思ったら、ずっとボーとして。何かあったの?」

私はどうやって家に帰って来たか、あまり記憶にない。

今はリビングでお母さんに話しかけられているらしい。

「でも加代さんの言う通り、その美容師さんの腕は確かみたいね。」

お母さんが私を見て笑った。

私は思わず両手で髪の裾を押え、視線を少し落とした。

「気が付いたらこうなっていたの。私もびっくりしちゃった。」

私は苦笑いをした。

「良く似合っているわ。前の髪型よりずっと颯爽とした感じがする。その方が知紗のイメージだわ。」

思いがけないお母さんの声に私は顔を上げた。

「よく知紗の事を分かってくれている人のような気がするわ。」
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