私の遠回り~会えなかった時間~
「その事なんだけど…、私は前に彬さんに会ったことがあるのかな?」
私の言葉にお母さんは不思議そうな顔をした。
「でも加代さんの甥っ子さんでしょう?もしかしたら加代さんの美容院で会った事があったのかしら?」
お母さんは美容師さんが男の人だった事を知っていたみたい。
「ううん、あそこではないような気がするんだけど、思い出せないの。」
私の困った顔を見て、お母さんはまた笑う。
「私もオープンの混雑が落ち着いたら早速美容院に行ってみよう。結局知紗もあそこに通うんでしょ?」
私は唸った。
「この髪型を維持するために、1か月に1度予約を入れるように言われたの。ショートカットにするとそんなに頻繁に美容院に通うものなの?」
そして私はそばに置いてある自分のスマホをチラっと見た。
彬さんは強引に私から番号を聞き出した。
「とにかくどんな時に連絡を取らなきゃいけない事が起こるか分からないからな。」