私の遠回り~会えなかった時間~
そう言いながら。
彬さん…。
思わず私は自分の唇に手を添える。
すると突然スマホが着信を伝えた。
「うちに居る時にスマホに電話がかかって来るなんて珍しいわね。」
お母さんはそう私に笑いかけると、席を外すようにリビングを出て行った。
私はすくっと立ち上がり、スマホを手に取った。
「えっ?」
そこには番号だけの表示。
間違い電話かしら?
いつもならそこできっと着信が止まるまで待っただろう。
でも私はある顔を思い浮かべると、スマホをタップした。
「…もしもし…。」
恐る恐る出たスマホから、声が聞こえる。