私の遠回り~会えなかった時間~
私の戸惑った様子にも、彬さんは動じない。
「そんな一生懸命の姿を見せられると、愛おしくなってしまう。」
私は思わずその大きな胸に頬を寄せる。
そして思わず彬さんの腰に手を回す。
やっと二人の体勢が安定した様な気がした。
私の胸の音が彬さんにも聞こえてしまっていないだろうか。
そう思ってしまうほど、二人の距離は近い。
「知紗、やっと分かって来たみたいだな。お前は俺から逃げられない。」
そうきっぱりと言い放った彬さんはニヤリと笑った。
「引っ越しの片づけを手伝ってほしい。俺は二階の自分の部屋を何とかするから、知紗は奥のキッチン周りを片付けて欲しい。」
私はポカンと彬さんの顔を見つめる。
「どうして私が?」
その様子が滑稽だったんだろう。