私の遠回り~会えなかった時間~
彬さんは明らかに笑いをこらえている。

「これから知紗もここに出入りするのだから、そういう所は知紗の勝手のいいようにする方が良いだろう?」

ますます彬さんの言う事が分からない。

「彬さん、もっとちゃんと説明して下さい。」

私は不思議に思いながら、顔をしかめる。

「俺達が付き合いを始めたら、当然知紗はここにしょっちゅう来ることになるだろう?そう遠くない日にここに住む事になるかもしれない。だから知紗のしたいようにキッチンを片付けてもらう方が良いだろう?」

ん?

「彬さん、本気で言っているんですか?」

首をかしげながら、私はもう一度彬さんに問いかける。

「俺は当然の事を言っただけだ。」

少し不機嫌そうな表情をした彬さんはもう一度胸に私の頭を抱え込む。

「彬さん。」

私は慌てて彬さんから離れようとした。
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