私の遠回り~会えなかった時間~
でも、男の人の力はやっぱり強くって…。
「そんなに照れなくても良いぞ。」
彬さんの腕の力が少し緩んだので、私は顔を上げた。
「あっ…。」
やっぱりそこにある彬さんの表情は優しくて…。
「俺は知紗の前にこうやって立つのに、随分頑張ったんだからな。」
やっぱり私達は以前に会っている?
「彬さん、私にはさっぱり分からないんです。」
私がそう開いた口を、彬さんは手で制した。
「覚えていないのも無理はないさ。また時期が来たら話してやる。とにかく…。」
彬さんはにこりと笑った。
「ここから始めよう。これまでの事は抜きで、何も考えずに俺と付き合ってくれ。」
私は何となくコクリとうなずいた。