私の遠回り~会えなかった時間~

彬さんの切れ長の目は優し気に私を見つめている。

「そこのコーヒーを淹れてくれ。休憩にしよう。」

キッチンの上に置いてあるコーヒーメーカーだけは先にセットされていたみたいだ。

私がコーヒーを淹れると、二人でテーブルにつく。

「何かのんびりするな。」

ぼそりとそんな事を言う彬さんを見つめる。

彬さんはコーヒーを一口飲むと、私に視線を合わせて言った。

「やっぱり似合っているな、その髪型。絶対知紗はショートだと思っていたんだ。」

「私は物心ついた時からずっとロングで…。加代さんもそれを変えようとしなかった。私の髪の手入れをするのを楽しみにしていたから、私もそのままで良いと思っていたんです。」

私は髪を触ろうとして、いつもは手を撫でる長い髪が無い事にハッとする。

「毛先を眺める癖は、まだまだ抜けるのに時間がかかりそう。」

私は彬さんに苦笑いをする。
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