私の遠回り~会えなかった時間~

浜田さんは得意げに笑う。

でもその手はデスクの上の書類を整理しながらだ。

「長い髪を短くしてかなり印象が変わったからじゃないですか。」

私もそんな事を言いながら、パソコンを立ち上げた。

「とにかく仕事を始めようか。」

浜田さんの言葉に私はうなずいた。

何だか今日は人の出入りが多いような気がする。

そろそろ昼休みという頃、ふと私はそう思った。

総務で一番経験の浅い私は総務の入口近くにデスクがあって、総務に用事があってくる人の窓口になっている。

そして今日やって来た人は、決まって聞いてきた。

「髪型を変えたんだね。」

私はいつもの窓口スマイルで、曖昧にうなずいてやり過ごす。

「大沢さん、お昼にしようか。」

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